本団体は、東日本大震災によって被災し心の傷を負った保護者や子どもたちを対象に、遊戯療法を用いた支援活動を行うため、2016年4月に発足いたしました。本活動のベースを築いてくださったのは、日本遊戯療法学会の当時の常任理事、有志7名の先生方です。東日本大震災後から年に数回、全国から無償で4年近くもの間、支援に来てくださった先生方には感謝してもしきれません。まさに心と心をつなぐ支援活動そのものでした。ありがとうございました。
私も当初から支援に入らせて頂いておりましたが、本当に多くのことを先生方から学ばせて頂きました。そして、当時お会いした子どもたちや保護者の方々、そして連携関係にあった児童館の職員の方々、その他の我々の支援活動を応援してくださった方々からも、私の現在の臨床活動に役立つような、大変多くの「心を豊かにするかけがえのない財産」を頂きました。
私はこれまで出会ってきた方々から頂戴した、温かい言葉や笑顔、そして子どもたちの遊びを通した表現の数々を今も鮮明に覚えておりますし、その記憶の1つ1つが、この活動継続のための原動力になっています。この支援活動にかける想いに賛同してこれまでも、そして現在もスタッフとして支援活動を支えてくれているメンバーがいます。それぞれの本務もあり多忙にもかかわらず、共に熱い想いで活動をしてくれている大切な仲間たちです。
本活動を実施するためには毎回、使用する玩具や遊具を搬入し、都度違う施設をお借りして実施しています。実施する部屋(遊戯室3部屋、保護者面談室2部屋)は毎回、1から作り上げますし、遊戯療法を実施するための玩具もそう多くはありません。また、撤収する際も時間との勝負になりますので、夏は全員が汗だくになります。毎回大変な労力を使いますが、どのメンバーも子どもたちと会うことを楽しみに、そして少しでもお役に立ちたい一心で継続してまいりました。いわゆる遊戯療法室としては不完全な状況であっても、子どもたちは真剣に遊び、遊びを通して自らの問題と向き合って成長してくれていますし、保護者の方々もご自身のこれまでの価値観などと向き合い、葛藤しつつも、お子さんのために毎回来談してくださっています。本活動を通し我々は、どのような環境にあっても、たとえ整備された遊戯療法室がなくとも、玩具も必要最低限のものさえあれば、子どもたちの心の表現に触れることはできるのだと確信しております。
そして、まさにそれを実証しているのが、現在のコロナ禍においてです。長年の震災支援経験から、長期化に備えて早くからオンライン上で子どもたちへの遊戯療法的支援を行うための準備をし、実施してまいりました。子どもたちからは、未知のウイルスへの不安が語られたり、外出自粛による息苦しさ、1人で過ごす時間が長くなったことで抱く寂しさや虚しさなどが、遊びを通して表現されております。試行錯誤しながらでしたが、早くから支援活動を開始したことで、子どもたちの不安解消に繋がることができているのではないかと感じております。
①変わらず継続して寄り添ってくれる大人がいること。
②その大人に見守られながら、自分の表現を安心して表出でき、たとえそれが苦しい表現であっても、目を反らさずありのまま受け止めてもらえる体験ができること。
③たとえ子どもであっても、自分の課題を自分で乗り越えていく力がつくようにと願い続けてくれる大人との関係性が築かれていること。
どのような環境下であっても、これらのことが子どもの心の安定や成長にとって大切であることを、我々は再認識しているところです。
私たちはこれからも、子どもたち、そして保護者の皆様と共に歩んでまいります。そして、賛同し仲間となってくださる方、連携してくださる方、様々な形で支援してくださる方々との出会いを大切にしていきたいと思っております。どうか、子どもたちの輝く未来のため、お力をお貸し頂けましたら幸いです。
心と心をつなぐ支援活動になるよう、私たちと共に……。
2020年5月 仙台テラピ・ド・ジュ研究会 代表 佐藤葉子